久良岐能舞台

  700年近い伝統を持ち、世界最古とも言われる歌舞劇である『能』。

　横浜市の久良岐公園の一角にある久良岐能舞台は、能楽会専務理事の池内信嘉氏（1858～1934）が囃子方育成のため、 1917年（大正6年）に東京日比谷の帝国ホテル裏に建てられたものです。設計には能楽研究家でもあった法政大学教授の山崎靜太郎氏（楽堂）があたりました。1931年（昭和6年）に東京芸術大学の前身である東京音楽学校邦楽科に寄贈されましたが、同大学には1964年（昭和39年）に能舞台が新設されたため解体保存されていましたが、能楽愛好家であった宮越賢治が譲り受け、当地に移築した。1984年（昭和59年）に横浜市に寄贈され、市民の能楽・茶道・日本舞踊などの活動に使われている。鏡板には、日本画の大家平福百穂による老松が描かれている。

夢幻能

能楽は、ユネスコ世界無形文化遺産にも指定されているが、世阿弥が作り上げた「夢幻能」の功績が大きい。

　夢幻能には名所旧跡を訪れたワキの前に、とある主役の人物（前シテ）があらわれて、その土地にまつわる物語をします。その人物は他人事のように物語をしてから消えるのですが、実はその物語における重要な存在であり、仮に現実の女性や老人などの姿をとっているにすぎないのです。その後、ワキが待っていると、今度は先ほどの主役の人物が、亡霊、神や草木の精など、本来の霊的な姿を明示しながら登場し（後シテ）、自分の物語を語らせ、舞わせ、成仏させるという二部構成となっております。

　時に生死の狭間に佇み、人々を魅惑する曼珠沙華の着物を纏っていただき、夢幻能のように、主役であるシテとして迎え、幽玄の世界観を共作させていただきます。